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Que BumBum!

2018  スタイロフォーム

人は本能的に、カタストロフを願望する。カタストロフから始まる新しい世界を夢想する。その後ろ暗い願望を叶えてくれる存在が、怪獣である。
かつて怪獣が破壊したのと同じ光景を現実で目の当たりにしても尚、人は懲りずに新たなカタストロフを望んでいる。
今、人が壊してもらいたがっているものは何だろう?
洗っても拭いきれない、ひどく絡みつく見えない何か。東京タワーでも大阪城でもない、その見えない何かをぶち壊す怪獣はどんな形をしているだろう。どんな物語を孕んでいるだろう。


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キ・ブンブン(ポルトガル語で「なんて 凄いお尻なんだ!」という意味 )は、縄文期に古代宇宙人が生んだ地底怪獣だ。宇宙人はキ・ブンブンを地中に埋めた。
彼女は闇雲にマントル内を掘り進めて、やがて地球の裏側に突き抜ける。そこで彼女が見たのは、豊かな肉体をさらけ出して情熱的に踊る、信仰の祝祭だった。
祝祭に触れることでキ・ブンブンは自分の出自を思い出す。再びマントルに潜り、地殻をかき分けて、彼女は日本 へ戻ってきた。
しかしそこは、キ・ブンブンにとって生きづらい場所になっていた。叫ぶべき歌を失い、踊りを禁じられた世界。
ただ、そうなったのは彼女にも原因があった。無邪気に地殻を動かしたのは彼女だったのだから。
キ・ブンブンの居る場所はここには無い。でも、地球の裏側に戻るには再び地殻をかき分けなければいけない。それはできない。彼女はどこにも行けなくなってしまった。
だから彼女は、禁じられた踊りを踊る。生きる喜びも、生き続ける哀しみも、全部彼女の肉体に詰め込んで。