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SHONEN JUMP BUDDHA -少年ジャンプ仏-

2020  週刊少年ジャンプ


週刊少年ジャンプで女神像を彫りました。ジャンプ仏シリーズの第一作です。

私は約18年現代マンガ図書館で働いていました。現代マンガ図書館は日本で最初のマンガ専門図書館で、長らく戦後マンガ資料保存の役割を担ってきました。

しかし去年図書館は閉館となり、多くの蔵書は大学図書館に引き取られたものの数万冊の本は行き場を失い、一括廃棄が決定となりました。その決定は一職員の力では覆すことが出来なかったので、せめてその一部だけでも残そうと思い、退職した翌日に軽トラックで図書館へ行き、荷台に積める分だけの古い少年ジャンプを引き取りました。

カッターで刻んだジャンプの中は、出す所に出せば高額がつく号も沢山あります。引き取った数百冊のジャンプを全てヤフオクやメルカリに出せば売れたジャンプは誰かの手に渡り、マンガとしての生命を永らえることができます。そして私は長い期間、マンガを保存することを仕事にして生きてきました。なので、本来であれば引き取ったジャンプは売買譲渡するべきです。 しかし 私は、この火事場泥棒のようにして手に入れたジャンプに対してだけは、そうしたくありませんでした。大事に守ってきたマンガを切り刻むという自傷にも似た行為を、そうせずにいられないエネルギーの源泉は何なのか。自問自答しながら、止まらない手を止まらないままに動かしました。

このプロトタイ プを発表した時、多くの人に「本が勿体ない」「彫らないで古いジャンプをそのまま展示した方が為になる」と言われました。その通りだと思います。でも、かつてジャンプを買って読んでいた人のほとんどは読み終わったジャンプを捨てています。そして捨てたこと自体も忘れています。
なぜ捨てるのは勿体なくなくて、切り刻むのは勿体ないのでしょうか。

捨てるという行為が、その対象(ジャンプで言うならばマンガの内容や少年時代)を目の前から消すことで人生を一歩先へ進めるための通過儀礼であるならば、私は消さずに、背負いながら先へ進む生き方は無いかと足掻いているのだと思います。


※上記は2020年当時の所感です。より詳しい解説をnoteに書き直したので、そちらもご覧いただければ幸いです。

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